2週間ぶりに帰って来た里で、真っ先に受付所へ向かったのには二つの理由があった。 一つは、報告書を提出する事。 もう一つは、窓口にいるイルカに会う事。 残念ながら今日はイルカは当番ではないらしく、いつもの席には別の担当者が座っていた。 記入した報告書を持って適当な窓口に立つ。 「今日はイルカ先生いないんですね」 イルカがどこにいるのか探りを入れるために、手近な相手として目の前の担当者に声を掛けた。 「しばらく受付は免除すると綱手様が」 「へえー。何かあったんですか」 相手に不信感を抱かせないように、さして興味が無い態度を装うと、担当者の表情が厳しいものへと一変した。 咄嗟に、出立前に騒ぎ始めたカカシの噂が脳裡をよぎる。 カカシにとっては、何を今更、という内容だったので相手にしていなかったものだ。 そして、そのきっかけはおそらく、カカシの30回目の誕生日。 「…昨日からイビキさんの所へ行っているみたいなんです」 この担当者は、なぜイルカがイビキに呼ばれたのか、理由を知らないのだろう。 たった今、カカシに新しい用事が出来た。 早く会話を切り上げようと、それ以上は何も言わずに提出を済ませた。 * * * * * 「来ると思っていたよ」 挨拶もせずに火影の執務室へ入ると、カカシを見るなり綱手が真っ先に口を開いた。 「尋問部に引き渡すような事ですか」 用件は言わずとも伝わっているようなので、カカシも単刀直入に尋ねた。 イルカの事となると、どうしても感情の制御が鈍ってしまい、冷たい口調になる。 「お前だってもう若くはないんだ。そろそろ遊びは終わりにしないか」 やっぱりそうだった。 30歳の誕生日が来てから急に騒がしくなったのも、イルカが尋問部へ連行されたのも。 『カカシに男の情人が出来た』 短い付き合いでも、ましてや遊びでもないイルカとの関係に、そんな噂を立てられて迷惑していたのはこっちの方だというのに。 しかも、恋人を情人呼ばわりするだけでなく、カカシが里にいない時に連れ去ったのが許せない。 火影相手に今にも無礼な暴言を吐きそうになり、ぐっと唇を引き結ぶ。 「イビキの所に行かせたのは、お前が何か仕掛けてる可能性があったからだよ」 「…やましい事は何もありません」 「そうみたいだね。イルカが協力的で助かった」 火影の命令で尋問されたのなら、イルカは全てを正直に答えただろう。 「せめて子どもだけでも作る気はないのかい」 それまで余裕に構えていた綱手が、唐突に口調を変えた。 低めの声音から真剣さが伝わってくる。 「ありません」 妙な解釈を持ち込ませるような隙を与えずに、きっぱりと、はっきりと、カカシの意思を告げる。 「イルカは『カカシのためで、里のためになる事なら、何でも受け入れる』と言ってくれたんだが」 そんな事まで言わされたのか。 拘留されている間のイルカの気持ちを考えると胸が痛んだ。 「…もちろん、もう釈放されてますよねぇ?」 綱手が頷いたのを確認して執務室を後にすると、奥から諦めたような溜め息が聞こえた。 * * * * * イルカの家に呼び鈴はないので、軽くドアを叩いて来訪を知らせる。 「イルカ先生?」 反応がないのでドアノブを捻ってみると、そこに鍵は掛かっていなかった。 イルカが鍵を掛けずに外出する訳がない。 鍵が開いているという事は、部屋の中にいるという事だ。 「イルカ先生?」 ドアを開け、玄関からもう一度名前を呼んだ。 がたがたと物音が聞こえて、ばたんと扉を開く音も響いてくる。 次いで、石けんと入浴剤の香りが漂ってきた。 入浴していたのか。 「すいません、カカシ先生。風呂に入っていて」 「いえ、気にしないで下さい。ちょっと上がってもいいですか」 「どうぞ」 脱衣場から届いた返事に、遠慮なく靴を脱いで脚絆を解く。 両足を楽にさせて立ち上がると、丁度イルカが脱衣場から出て来た。 髪を下ろした浴衣姿で、首にタオルを引っ掛けている。 「昨日は泊まりで風呂に入れなくて」 「イビキの所にいたんですってね。受付で聞きました」 イルカがカカシの前を横切って台所へ入った。 2つの硝子コップを用意して、冷蔵庫から麦茶の瓶を取り出している。 両方のコップに注ぐと、片方をカカシに手渡して、もう一方は自分の口元へと運んだ。 剥き出しのイルカの咽喉仏が、ごりごりと上下するのを見てカカシも口布を下ろし、一気に飲み干した。 任務明けで色々と振り回され、理性の箍が外れ掛けている。 流しの中の桶に乱暴にコップを放り、イルカの首筋に齧りついた。 「…っ、わっ、ど、どうしたんですかっ」 イルカのコップも同じ場所へ放り投げる。 桶の中に水が張られていなかったら、きっとずたずたに割れていた。 舌を尖らせて耳から頬をなぞり、濡れた口元へ辿り着くと丹念にそこを舐め上げた。 その間にも片膝をイルカの足の隙間に割り入れ、力ないそこに直接刺激を与える。 イルカは下着を身に付けていなかった。 「イルカ先生も期待してたんじゃないの…」 「…ちがっ!…っア、ちょっ…っく、…待っ…」 襟を思い切り割り開くと、片方の肩から浴衣の生地が滑り落ち、無防備な体が露わになる。 腰紐でやっと引っ掛かっている浴衣が艶っぽくて、カカシの下半身が正直に反応した。 胸の突起の片方に舌を這わせ、もう片方を指で摘み上げて爪先で優しく扱く。 「ぁ…んっ…っ、んっ!んーっ」 イルカは突っ張った手で調理台の角を掴み、敏感な箇所を擦るたびに腰を捩って、自ら股間をカカシの膝へと押し付けてくる。 それを無意識にやっていたようで、今度は懸命に膝を閉じようとして、かえって強く股間を押し付ける事になった。 「こっちがいいの?」 先端から溢れた精液がイルカの陰茎を覆い、妖しげな光りを放つ。 乳首から手を離し、そこを緩く握って焦らすように扱き始めた。 「あっ、やぁ…ぁ、…っふ、んっ!」 イルカの腕がカカシの背に回り、ベストをぎゅっと掴んだり引っ掻いたりしてきた。 外に声が聞こえないようにイルカの口をカカシのそれで塞ぎ、口内を蹂躙する。 イルカがキスに気を取られているうちに、陰茎を弄っていた手を更に奥へ忍ばせ、ふやけた会陰を伝ってぷつりと後孔へと潜り込ませる。 快楽に馴らされた体は、カカシの指を喜んで迎え入れてくれた。 「んーっ!んっ、…ふっ、んんーっ」 中も入口も丁寧にほぐしていると、間もなくして腸壁の収縮が始まった。 こんな指ではなく、カカシ自身をぎゅうぎゅうに締め付けて欲しい。 指を1本増やし、今度は後ろから2本の指でイルカの中を広げるように撫で擦っていく。 「…やあっ!はっ、あっ…っん、ふぅ…っん」 イイ所を掠めたようで、一際高い声が上がった。 カカシの熱で、早くイルカの中を掻き回したい。 一端引き抜き、指を3本に束ねてから再びイルカの中に沈めていく。 複数の指をばらばらに動かし、不規則に前立腺を擦る。 イルカの陰茎は今にも弾けそうなほどに張り詰めている。 「もう…入れてもいい…?」 肌に熱い息を吹き掛けて尋ねると、もう堪らないという顔をしたイルカが弱々しく頷いた。 イルカを調理台の上に腰掛けさせ、両足をカカシの肩に引っ掛ける。 手早く自身を取り出し、手を添えてイルカの後孔へ当てがった。 イルカの呼吸を見計らって、最も力の抜ける瞬間に、一気に亀頭をめり込ませる。 「はっ…あぁ、ぁ…」 「…っ」 先端の丸い部分を飲み込めば、後は大きな衝撃もなく進んで行ける。 小刻みに腰を揺すったり、ゆっくりとした抜き挿しを繰り返しながら、イルカの中がカカシの質量に馴れるのを待つ。 やがて全てを収め、イルカの体に覆い被さろうとした時になって、ようやくカカシは自分がまだ服を着たままだった事に気が付いた。 イルカと繋がった状態でベストとアンダーを脱ぎ、次々に床へ落としていく。 お互いに汗ばんだ肌をぴったりとくっ付けて、イルカの体と密着する。 「はぁ…カカシ、さん…」 イルカの腕がカカシの首に絡まってくる。 引き寄せられるままにイルカの耳元に唇を寄せた。 「ごめんね…。オレのせいで長い時間つらい思いさせて…」 動揺したのか、結合部がぎゅうっと締め付けられた。 「あっ…、っ、そんな、こと…な…ぃ」 深い所から僅かに腰を引き、すぐに奥へ戻って最奥を突く。 陰茎全体を隙間なくイルカに食まれているようで、とても気持ちが良い。 そこで腰を左右に揺らしたり円を描いたりすると、イルカも気持ち良さそうな顔をする。 「…カカシさんへの…っう、はぁ…愛を、何度も確認させられてる…ぁ、みたい、で…」 思い掛けないイルカの言葉に、一時的にカカシの腰が動きを止めた。 「強制されてないか、とか、お互いに好意があるのか、とか…。今までカカシさんに言った数よりも多いくらい、何回も好きだって言いました」 「そんな事…、一言も聞いてない」 「えっ…?あ…、ぁ、やっ…急、にっ…!はっあぁ、んっ、んっ…」 腰を動かしやすいように上体を起こし、先程とは比べ物にならない強さと早さで律動を開始する。 するとすぐに耐えられなくなったイルカが、一足先に前を弾けさせた。 間髪入れずにイルカの陰茎を掴み、射精の滑りを借りて荒々しい手付きで扱き始める。 あまりの快楽に失神し掛けているイルカを、容赦なく追い詰める。 イルカの意識と関係なく蠕動する内壁に引きずられ、カカシの熱も頂点に達した。 欲望の赴くままに、イルカの最奥にカカシの精液を注ぎ込む。 衝撃でイルカの体が痙攣し、扱いていた陰茎からもじくじくと淫液が零れ出た。 濡れた音を立てる下半身を無視して、イルカを抱き起こす。 「人前で言うのも良いんだけど、オレに向かって言ってくれた方がもっと良いかな」 心音にも負けそうな小さな声が、肩で息継ぎをするイルカに届いたかは解らない。 |