「それはオレだって…まあ…」 ほんの僅かだけカカシの目が泳いだ。 歯切れの悪さは、後ろめたさの裏返し。 どういう言い訳をするつもりか知らないが、カカシのした事に変わりはない。 「…そこそこ名の知れた上忍ですから上客からの指名任務ぐらいありますけど…。でも、だからってそれはあなたを構う事とは関係ないでしょう」 自分の耳を疑った。 今カカシから、上忍だとか任務だとか、そういう単語が聞こえたのだけど。 「それとも…。構うなっていうのは余計な事は考えないで任務だけやってろって事?里の上層部から何か言われたんですかっ」 まただ。 里の上層部という単語が聞こえてきた。 頭が混乱して何も言えない。 しばらくの間イルカが黙っていると、カカシの目に薄っすらと涙の膜が張ってきたように見えた。 もらい泣きという訳ではないのだけど、それを見ていたらイルカまで目に涙が溜まってくる。 言葉はなくても、カカシの感情が真正面からぶつかってくるようで胸が熱くなった。 最初からカカシはそうだった。 何も言わなくても、本当はイルカにも伝わっていた。 だからこそ、カカシの事が忘れられなかった。 でも確証がないから、傷付いても傷が浅く済むようにと、イルカが勝手に逃げ道を用意していたのだ。 「…あなた忍だったんですね…」 不意に漏れた溜め息のように、するりと口から零れていた。 忍で、しかも中忍のイルカよりも上の階級ならば、太刀打ちできなくて当然だ。 「さっき受付で知ってるって言ったじゃない。7班の上忍師だって。一体何だと思ってたのよ…」 「…遊郭の…男娼かと…」 カカシが目を見開いた。 しかしすぐに顔をしかめ、素早く抱き寄せられた。 力強い腕がイルカの体を締め付ける。 もうカカシの手を振り払おうとは思わなかった。 「何も…言ってくれないから…」 「去年まで暗部にいたから身元を明かせなかったんですっ、軽い気持ちとか、絶対にそんなんじゃないですっ、オレは本気なんですっ」 今頃そんな事を言われたって、南国では体を重ねる以外、ほとんど会話もなかった。 「…俺のことも…何も聞いてくれないし…」 「…休暇が短いから…会うとつい…がっついちゃって…今だって…」 そう言ってカカシに腰を押し付けられる。 「っ…!」 いつか感じた熱と同じか、それ以上の熱をそこから感じた。 咄嗟にカカシから離れようとして腕を突っぱねるが、びくともしない。 「2年ぶりなんだから許してよ…」 拘束の強さを維持したまま、首筋をぺろりと舐められる。 それだけで泣きそうになった。 懐かしいし、嬉しいし、気持ち良いのだけど、それ以上に安堵感で体が震えた。 これからはもう、何の遠慮もなくカカシの体に縋り付く事ができる。 「もう…我慢できない」 「…んっ!」 急に荒々しく唇を塞がれ、器用な舌に口内を蹂躙される。 カカシに体重を掛けられて体が傾ぎ、バランスを取ろうとして、たどたどしく足を後退させた。 すると、背後の腰の辺りに、道端のオオムラサキツツジの枝が接触した。 「んっ、…はっ、んんっ、まっ…」 些細な段差に足を取られ、カカシに覆い被さられるようにして、背中から枝の上へと倒れ込んだ。 しかし、枝の折れる音や葉が千切れる音はほとんどせず、折れた枝先で顔を傷付ける事もなかった。 丁度、幹と幹の間に倒れ込んだようだ。 背中や後頭部も、カカシが手を挟んでくれたおかげで、男二人分の体を受け止めたとは思えないほど柔らかい衝撃だった。 「ここでも…いい…?」 言われた意味がわからなかった。 何が、と尋ねようとしたら、カカシに下着ごとズボンを下げられた。 半ば勃ち上がったイルカの陰茎が顔を出す。 カカシも素早く自身の陰茎を露出させ、何の躊躇いもなく2本の陰茎を纏めて扱き始めた。 「あっ…!あっ!…はっ…あっ、ぁ…あっ」 性急な動きにすら付いていけないのに、カカシの手が二人分の先走りで滑るたびに予想外の刺激が加わる。 少しだけでも手を緩めてもらおうと、そこに手を伸ばした。 だが、その手を掬われ、迷いなく2本の陰茎に導かれる。 当たり前のようにそれを握らされ、イルカが手を離さないように、上からカカシの手を重ねられた。 そのせいで、目的とは正反対の、より激しい動きへと変わってしまった。 「やっ、ぁあっ!…はやっ、んっ、あっ…まっ、あっ!ぃやああっ!」 自分の手を全く自由に動かせず、攻め立てられるままに精を放った。 それでも達したのはイルカだけで、カカシは自身の高みを目指して更に速度を上げていく。 まだ敏感なイルカのそこを、射精を上回る快感が引っ切りなしに突き抜ける。 腰が大きく波打ち、はしたなくも体が感じている事をカカシに伝えてしまう。 「はっ、は…ぁ、あっ…はぁ、はっ…あ…」 「ふっ…」 熱くて濃い迸りを下腹部に受け、ようやくカカシの手が動きを止めた。 浅い呼吸を繰り返しながら、なんとか空気を取り込む。 手先の器用さを上げたり、体力を付けてきたりしたのは、こんな事をするためじゃない。 里への貢献と、自分の将来のためだった。 だから、まるでこの事ために鍛錬を積んだようになってしまったのは偶然なのだ。 「イルカ先生も溜まってた?…けっこう…早かったけど…」 足元からカカシの呟きが聞こえ、体を半分に折り畳まれる。 恥ずかしい部分に視線を注がれ、間もなくして後孔にぬるついた丸いものが宛てがわれた。 それが上下左右に動きながら、中に入ってこようとしてくる。 しかし、きつく閉ざされた蕾は、簡単に口を開きそうにもなかった。 「…浮気してない?会わない間、誰ともシてない…?」 「し、…して…な、い…」 「オレだけ?」 返事を声に出す事ができず、代わりに小さく頷いた。 その時、近くに人の気配を感じて体が凍りつく。 微動だにせずに通り過ぎるのを待つつもりだったのに、カカシが後孔に指を入れてきた。 喘ぎは咽喉の奥で噛み殺せたが、体の反応まではそうはいかない。 イルカがびくつくたびに、枝葉の擦れる音がする。 気配が近付くにつれて、心臓の脈打つ音がどんどん大きくなる。 一方カカシは、全くそんな事は気にもせず、指1本でどちらのものともつかない精液を丹念に塗り込む作業に没頭している。 段々と粘着質な音まで聞こえてきて、こんな姿を人に見られてしまう、と思って身を固くした。 その分カカシの指を締め付ける事になり、イルカにとっては諸刃の剣となった。 公衆の往来で体の緊張を解く事も、感覚に全てを委ねる事もできない。 ただ翻弄されていると、空いている方の手を前に回され、絶妙な力加減で陰茎を扱かれた。 「あっ…!」 思わず声が出てしまったが、たまたま通行人には聞かれなかったようで、何事もなく気配が遠ざかって行く。 運良く、こちらの道にやって来る事はなかった。 ふっと気を抜くと、その隙にカカシの指が一気に3本に増やされた。 「はぁ…!」 「…誰かに見られると思って興奮した?」 カカシのからかいを否定したくても、この体では説得力がない。 精神的にはひやひやしたけど、肉体的にはカカシの言う通り、熱が上がっている。 そういえば、初めての時も野外だった。 でも、痛い思い出は一度もない。 気持ちの良い事ばかりで。 「…はあっ!…ソコッ、やあっ!」 徐々に指で掘り進められ、とうとう奥の秘部へと到達してしまった。 ここまで開けば、カカシが中に入って来られる。 イルカの体を熟知したカカシがそれを知らないはずもなく、さっと指を引き抜くとすぐに熱い肉棒を挿し込んできた。 「はっ、あ…ぁ…んっ、はぁ…んっ…」 痙攣するように、体が時折びくびくと跳ね上がる。 そのたびに、中のカカシをぎゅうぎゅうと締め付けてしまった。 やがてイルカの体がカカシの質量に馴染んだ頃、カカシが優しい手付きで額に掛かる髪を掻き上げてくれた。 虚ろだった視線を、なんとかカカシに合わせる。 「…これからはいっぱい話聞かせて。オレからもいっぱい話すから…」 「はい…」 体は何度も繋げてきたけど、本当の意味では今やっと繋がったような気がした。 |