中忍4年。
アカデミー教師3年目。
今年の夏も、海の家での任務がイルカを指名して依頼された。
去年とは任務に就く時の心構えが違う。
カカシという男にはもう二度と会わないだろうけど、中忍が一般人にいいようにされる事がないように日々の鍛錬は怠らなかった。
今年からはアカデミーで担任も受け持っているので、余計に情けない事はできない。
「イルカー、パラソル1本頼むー」
店先で焼きそばを作っていた店主に言われ、パラソルを取りに行く。
すぐに、よしずの日陰で待っていたお客さんと合流した。
案内された砂浜に、風で飛ばされないようにしっかりとパラソルを立てて海の家に戻る。
「イルカ先生!」
店に入る手前で、小さな女の子の声で名前を呼ばれた。
まさかこんな所にいるはずはないと思い、半信半疑で声のした方に視線を投げる。
すると、カップに山盛りのかき氷を持った女の子がこちらに駆け寄って来た。
「ヒバリじゃないか!遊びに来たのか?」
「うん!おじいちゃんに連れて来てもらったの!」
ヒバリはイルカのクラスの生徒だ。
「ねえイルカ先生、あたしの水着かわいい?」
少し照れたように尋ねられる。
授業で使うものとは違って、ヒバリは色鮮やかな水着を着ていた。
女の子の服装や髪型の事はよくわからないので、イルカがそういう事を聞かれた時に返す答えはいつも決まっていた。
「ああ、似合ってるよ」
イルカの答えに満足そうな顔をして、ヒバリは浜辺の方へと走って行った。
まさか里から大分離れた任地で生徒に会えるとは思わなかった。
海の家での任務が入るようになってからは、夏休みの間は生徒たちには会えないものだと思っていたから。
店に入り、ちょうど入れ違いで出て行ったお客さんのテーブルを片付ける。
食器を下げ、テーブルを拭いていたら、奥の席から店員を呼ぶ声がした。
イルカが一番近い位置にいたので、手を止めて応対に入る。
エプロンのポケットを探り、メモ帳と鉛筆を掴んだ。
「ご注文で…しょう…か…」
お客さんの顔を見た途端、威勢の良かったイルカの声は小さく窄まっていった。
「会いたかったよ…イルカ、先生?」
もう二度と会わないと思っていた男が、去年と同じ席に腰を下ろしていた。
何度かまばたきをしてみても、目の前の男の存在に変化はない。
「さっきの子って生徒?イルカちゃんって先生もやってたんだね」
「あ…の…、ご、ご注文は…」
接客に徹しようとしたが上手くいかず、声が震えてしまった。
それを聞いたカカシが、口元をいやらしくゆがめて笑った。
「ここで欲しいのはあなただけ。でもちゃんと夜まで待つから」
真夏の日中、イルカの背筋に寒いものが走った。



店主は他にも飲食店を経営していて、夜はそちらへ行ってしまう。
昨年までは店主と二人でしていた仕込みと片付けも、今年からは一人だ。
最後の戸締りまでがイルカの仕事になった。
イルカ以外の従業員も、海水浴客が引く頃には帰る。
そして、広い店内に一人で残された時。
急に恐怖心が増した。
前回の事があるからか、いくら鍛錬を積んでいても実際にカカシを前にすると、とても敵わないような気がした。
「イルカ先生」
ヒバリとの会話を聞かれてから、カカシにそう呼ばれるようになった。
カカシは、誰かがいる間は空気のように奥の座敷に溶け込んでいたくせに、イルカが一人になると見通しの良い席に移動してきた。
そこから呼び掛けられ、更にこちらに近付いてきて、カウンター越しに手元を覗き込まれる。
イルカの警戒度が、ぐんと上がった。
「…なんか手伝おうか…?」
焼きそば用のキャベツを切っていた手が、ぴたりと止まる。
「…結構です」
作業を再開し、手元を見たまま顔も上げずに答えた。
あんな些細な一言に動揺した。
鍛錬が足りない証拠だ。
焼きそばの具材を切り終え、カレーの具材に移る頃、店の出入り口の方から水の音が聞こえてきた。
カウンターから身を乗り出して目を向けると、カカシが使用済みのパラソルに水を掛けている後ろ姿が見えた。
暑いから水遊びでもしているのだろうか。
具材を切りながらちらちらと目をやると、どうやら洗っているらしいという事がわかった。
しばらく放っておいたら、カカシは結局すべてのパラソルを洗ってくれた。
パラソルを洗うのは、本当はイルカの仕事だった。
申し訳なくて声を掛けようとしたら、今度はカカシがシャワー室へ行ってしまう。
営業中は有料のシャワーも、閉店後は従業員が自由に使える。
それを知っていて、シャワーを浴びにでも行ったのかと思った。
だが、タイルにデッキブラシを掛ける音が聞こえてきて、慌ててシャワー室へと向かった。
「掃除なら俺がやりますからっ、もう帰って下さいっ」
シャワー室の掃除もイルカの仕事だ。
「…帰るわけないでしょ。イルカ先生は調理場。早く仕事に戻りなさいよ」
カカシには、掃除をやめるつもりはこれっぽっちもないようだった。
話している最中も、手足を休みなく動かしている。
どうしたらいいのかわからなくて、その場に立ち尽くす。
「早く戻らないとキスしますよ」
カカシの言葉で、逃げるようにシャワー室を後にした。



仕込みの次にパラソルを洗って、次にシャワー室を掃除して、最後に座敷を掃除しようと思っていた。
パラソルとシャワー室はカカシがやってくれたので、イルカは仕込みに続いて座敷の掃除に入った。
掃除の基本は上からだが、砂が舞うので畳と床をほうきで掃いてからテーブルを拭く。
最後に奥のテーブルを拭いていると、カカシがシャワー室から出て来た。
「ありが…」
ただ、お礼を言おうとしただけだった。
その口を塞がれ、拭いている途中のテーブルの上に押し倒される。
背中から伝わるテーブルの冷たさとは裏腹なカカシの体の熱さを感じ、肩がびくりと震えた。
特にカカシの股間の辺りが酷く熱を帯びている。
「…イルカ先生が…シャワー浴びるの想像してたら…」
耳の裏側や首筋に荒々しく口付けられ、熱い舌がそこを這う。
エプロンと服の隙間から器用に手を入れられ、いきなり胸の突起を爪で引っ掻かれた。
「っ、んっ…」
軽い痛みと快感で、体に電流が走る。
瞬間、僅かに腰が浮き、ズボンを中途半端に引き下げられた。
下着越しにカカシがぐいぐいと腰を押し付けてくる。
体が燃えるように熱い。
カカシが、下着の上から陰茎も睾丸もめちゃくちゃに揉みしだいてきた。
「あっ、あ、やっ…あっ、やああっ」
エプロンの布を無理矢理左側に寄せて、覗いた片方の突起に歯を立てられる。
我慢するとか、抵抗するとか、そんな事を考える隙もないままに射精していた。
脱力した体をカカシに難なく裏返され、下着とズボンを一遍に脱がされる。
上半身だけがテーブルに伸び上がり、カカシに向かって尻を剥き出しにした格好で畳に膝を付いた。
「ちょっと冷たいかも…」
何の事を言っているのかわからず、首を捻じ曲げて後ろを振り向こうとして失敗した。
ひんやりした粘液が尻に垂らされて体が仰け反る。
「ひっ…や…ぁ…」
そのぬめりのせいでカカシの指が一本、するりと中に入ってくる。
中を広げるようにぐるぐると掻き回され、一端出て行ったと思ったら一本増えてまた入ってきた。
二本の指がばらばらに動く。
「んっ、あ…はぁ、あ、あっ」
走り込みをして体力を付けたし、手先を鍛えて印を早く組めるようになった。
それなのに、鍛錬の成果を何一つ発揮できていない。
でも、別にそれでもいいじゃないか、と囁く自分がいる事にも気付き始めていた。






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2009.06.16