女たらしは男たらしでもあるのかもしれない。 三本の指が競うようにしてイルカの中に入って来た時、ふとそう思った。 時折注ぎ足される粘液の力を借りているとはいえ、痛みを全く感じない。 「ぁ…んっ!…っ、やっ…ぁ、そこっ…やめっ、やぁ…!」 奥の敏感な所を爪の先で引っ掛かれた。 カカシにそこばかりを狙われて、体が痙攣したように何度も跳ねる。 次に擦られたら射精する、という所まで来て、カカシの手に陰茎の根元を掴まれた。 「やっ、イ…キたいっ…!はな、してっ…!」 ぎゅうっと握り込まれる。 放出は叶わず、拾う快感の鋭さだけが増してしまった。 「ちょっとだけ我慢して…。何回もイクと後がつらいから…」 奥ばかりを責めていた指が、狭い空間を広げるような動きに変わる。 「ぁ…ん、んっ…」 入口の輪も、出入りを繰り返されて、すっかり広がってしまった。 イルカの意思とは関係なく、ひくひくと蠢いて口を窄めようとする。 尾てい骨の辺りを生温かい舌でべろりと舐められ、腰が大きく震えた。 陰茎を握るカカシの手に、ぐっと力が入る。 イルカの波が収まると、カカシの手が僅かに先端に寄り、伸びてきた一本の指で亀頭の頂点をぐりぐりと抉られた。 「ぁああっ、はっ、やぁあ…んっ」 声を抑えられないばかりか、ずっと口も開けたままで、口端を伝って唾液が垂れていく。 涙で滲む目の端で後ろのカカシを見ると、情欲に染まった顔をしてイルカの腰や尻を舐め回していた。 それに気付いたカカシがこちらに目を向け、イルカと視線を絡ませたままで、また亀頭の窪みを抉ってきた。 「はあぁ!っ、あ…あっ、あっ」 とても首を捻っている余裕はなくて、テーブルに突っ伏して頬を擦り付ける。 「挑発してるの?」 「ぁ、…ちがっ…んっ」 中からカカシの指が出て行った。 ぬめったカカシの両手に腰を掴まれる。 どうして両方の手がぬめっているのか思い当たり、ますます顔が火照った。 体の内側に空洞を感じたのは一瞬で、直後に熱い肉棒が勢いよく挿し込まれる。 「…わ、キツっ」 「あっ…あ、あ、ぁ…ふっ、んっ」 張り出た部分も易々と飲み込み、異物を排除しようとしているのか馴染もうとしているのか、勝手に内壁が蠕動する。 体がこれでは、悦んで誘い込んでいると思われても文句は言えない。 あっという間に奥までみっちりとカカシが埋まった。 イルカの腰を掴んでいた手が離れ、カカシが背中から覆い被さってくる。 「ふう…」 一仕事終えた後のような吐息を肩甲骨の間に吹きかけられた。 小休止に入りそうな様子に、イルカも体の力を抜く。 しかしそれも束の間、エプロンの脇から手を入れられて、両方の胸の突起を弄られた。 下腹部がじんと痺れる。 「っ、あ…ぁ、っ…んっ」 「くっ…」 少し苦しそうな声が漏れ、カカシが僅かに腰を引いた。 それがじりじりと奥に戻ってきて、背中に張り付かれたまま、浅いストロークでゆっくりと前後運動が始まった。 片方の突起から手が離れ、柔らかく陰茎を包まれる。 最初のうちはゆるゆると動いていた腰と手が、段々と激しいものに変わっていく。 「…あ…ぁ…あ…あっ…んっああっ!」 不意に亀頭の窪みに爪を立てられて、あっさりと精を放った。 上体を起こしたカカシに、がっしりと腰を掴まれる。 「やっ、ああっ!ちょ…やぁ、あっ!…まっ…んっ、やぁあ!」 こちらの息が整う前から、がんがんと強く早く打ち付けられた。 とんでもない声が出ているのに、それを抑えられない。 お客さんたちが食事をするテーブルなのに。 昼間、すぐそこで生徒に会ったのに。 「ふぅんっ!…ぁ…あっあっ、ぁ…」 最奥にカカシの肉棒がぶつかり、そこに熱い精液を撃たれ、自分の体内に更に深い場所がある事を知った。 射精しながらも腰を突き入れてくるカカシの動きに合わせて、イルカの先端からもびゅくびゅくと精液が溢れ出る。 中での放出が収まると、少しほっそりしたカカシ自身がずるずると抜けていった。 カカシの息はほとんど乱れておらず、イルカ一人が呼吸を荒げて手足を動かす事もままならない。 エプロンの結び目をカカシに解かれ、脱力していた体を仰向けにひっくり返された。 中途半端に脱がされていた衣類もエプロンも、全て脱がされる。 膝裏を掬われてテーブルの上で膝を立て、カカシに向かって陰部を露出させるような格好をとらされた。 内腿を押され、更に足を広げさせられる。 「はぁ…ぁ、あ…あ…」 すっかり質量を取り戻したカカシの肉棒が、再び後孔に押し入ってくる。 ぐしょぐしょになったそこは、何の抵抗もなくカカシを迎え入れた。 倒れ込んできたカカシは、既に服を着ていなかった。 素肌で触れ合うと、より一層生々しさが増す。 カカシの手が首の後ろに回ってきて、頭を少し抱き起こされた。 「ん…」 唇が重なり、当然のように舌を絡め取られる。 何度も角度を変えて激しく口付けられているうちに、縋るようにしてカカシの首に腕を回していた。 * * * * * カカシが姿を消す時、いつも何の痕跡も残っていない。 昨年は8日目に、今年は4日目になって、いなくなっている事に気が付いた。 何の前触れもなく突然来なくなって、その時に初めて知るのだ。 昨日が最後だったのか、と。 足し算したって、2年で10日。 恋人だなんて都合の良い言葉を使われても、それが偽りなのは目に見えている。 大して興味がないからなのだろうが、カカシからイルカの私的な事を尋ねられる事はなかった。 逆に、カカシが私的な事をイルカに話してくれる事もなかった。 そんな薄情な男の事が頭から離れないのは、やはり肉体関係を持ってしまったからなのだろう。 本当は何の結び付きもないのに、深い繋がりがあるかのように錯覚してしまった。 イルカも寂しかったのかもしれない。 酒を飲みに行く友人や同僚はいても、身寄りはいないし、付き合っている女性もいなかった。 そういうものが故郷から離れた任地で開放され、カカシのような得体の知れない男に体を許してしまったのだ。 いけないのは自分。 弱いのは自分。 楽しい時間が終わった時の、胸にぽっかり穴が開いたような、人恋しいような、こんな気持ちを持て余すぐらいなら、始めからからきっぱりとカカシを拒絶するべきだった。 もし来年カカシに会う事があれば、次こそは絶対に断ろう。 本気でそう思うほど、カカシが急に消えた事が寂しくて堪らなかった。 |