「そりゃ!」 「とう!」 食後に二人で旅館内を散策していると、壁のほとんどが窓の部屋に卓球台が三台並んでいるのを発見したのが始まり。 窓から見える真っ暗な外は、部屋の明かりが届く範囲だけ紅葉が臨めた。 日が昇れば、イルカが喜んでくれる風景が広がるだろう。 「あ」 「やった!」 負けた。 イルカの事に現を抜かしていたら。 内心は複雑だ。 「ははっ。楽しかったですね!」 「はぁ、そうですね」 台から離れてソファーに座った。 反動でイルカの浴衣の裾から白い足が覗いた。 ごくっと息を飲んだ。 目を上へ持っていくと、首や耳の裏、額にも汗が浮いていた。 「いい汗かきました。やっぱり、温泉といえば卓球ですよ」 「じゃぁ、寝る前に一っ風呂浴びましょうか」 「そうですね」 理性を総動員して下心を隠した。 表情や口調にも滲み出ないように。 部屋へ戻り、風呂の準備を整えるとイルカが部屋を出ようとしていた。 「イルカ先生、どこ行くの?」 「え?お風呂ですよ。カカシ先生も行くんじゃないんですか?」 それを聞き、子供のように頬を膨らませた。 「折角だから部屋の風呂入りましょうよー。…一緒に…」 聞き分けのない子のように上目遣いでイルカを見た。 「あー、…忘れてました。いや、さっきはすぐに上がってしまったので大浴場に行く事ばかり考えていて…」 イルカがお風呂セットを持って、引き返して来た。 顔は赤くなっている。 忘れていたのが恥ずかしくて赤くなっているわけではないだろう。 「すみません」 「いいえ!さぁ、入りましょ!」 脱衣所では大浴場でのイルカの脱ぎっぷりを見習って、パッと浴衣を脱ぎ、とっとと風呂へ入った。 洗い場はタイル敷きで、露天風呂とはガラスで仕切られていた。 ひんやりしたタイルは卓球で体温の上がった体には気持ちよかった。 体を流すと、ガラス戸を引き、狭い露天風呂へ直行した。 流石に外は寒い。 熱めの温泉で丁度いいのかもしれない。 静寂な空気を乱さないように、静かに湯に入った。 そこでやっとイルカが入ってくる音がした。 もしかして、イルカは二人で風呂に入るのを躊躇って、中々浴衣を脱げずにいたのだろうか。 後悔。 サクラではないが、好きな人とのメルヘンをゲットしたかった…。 イルカはガラス張りの洗い場で、タオルに泡を立てていた。 イルカが内側で湯を使ったので、ガラスが曇って中の様子が見えなくなってしまった。 じーとガラス戸を見つめていたが、一向にイルカは出てこない。 まるで焦らされているようだ。 仕方なく、暗い景色に目を凝らした。 卓球台の部屋ほどではないが、ここからでもいくらか紅葉が見えそうだ。 明るくなったらもう一度入ろう。 カラカラカラ… 後ろから戸を引く音がした。 控えめに聞こえる足音。 イルカが入りやすいように湯船の右側に体を寄せる。 顔の横をイルカの足が通った。 ちゃぷんと可愛らしい音を立てて、イルカが肩まで湯に浸かった。 正面を向いたまま乳白色の湯を探り、イルカの手を握った。 今になって、心臓の音がうるさく聞こえ出す。 「…贅沢ですよね…」 イルカが独り言のように呟いた。 手を繋いでいるだけなのに、自身が変化するのがわかる。 指にイタズラを仕掛けた。 「あ…」 イルカが驚いて手を引いたが、逃げられないように強く握った。 少し近付き、イルカの肩に自分の肩を触れさせた。 びくりと動く振動が伝わってきた。 「イルカ先生…」 空いていた片手でイルカの目を塞ぎ、濃厚に口付けた。 「んっ、んんっ、ん」 イルカの舌がおずおずと差し出された。 手加減なしに貪る。 二人きりの空間の方が安心するのか、イルカはとても素直だった。 じわじわ興奮に侵食される体はイルカだけを求め始める。 「くっん!ん!…はぁ、んっ」 イルカ自身に手を伸ばせば半ば勃ち上がっていて、少し擦るとすぐに固くなった。 イルカの瞼が快感を追うように閉じられている。 鎖骨や首筋に舌を這わせる。 イルカ自身を掴んでいた手を離し、そこへイルカの手を導いた。 「やっ、あっん」 「イルカ先生、オレのと一緒に…」 自分の性器とイルカのそれを握らせ、逃げられないように手を重ねて、同時に扱いた。 「あっ、ああっ、あ、あ」 ぎこちないイルカの手は二人の快楽を上昇させるにはバランスがよく。 「カ、カシ先生、もっ出るっ!お湯がっ、汚れっ…!」 「始めから、濁ってるから、…わかりませんって」 「いっ!っあ、あ!…あっん!ああっ!」 「…っく!」 ほぼ同時に達した。 荒い息を吐くイルカに、まだ足りないとばかりに乳首を舐め回した。 「あっ!」 一際甲高い声が響く。 尖る先端を舌で捏ね、時には歯で甘噛みする。 達したばかりで敏感になっているそこは、舌のざらつく感触ですら快感が生まれるのだ。 耐えられないのか、イルカはカカシの頭を自分の胸に押し付けるように抱きしめた。 一度吐き出したばかりの自身は萎える事もせず、勢いを保ったままで。 「カカシ先生っ、やっ、俺ばっかりっ、…あんっ!」 イルカを湯から引き上げ、縁に体を折り曲げさせた。 尻を突き出すように露わになった後口に舌を這わせる。 「イルカ先生、ヒクヒクしてる」 「い、言わないで…」 蕾にふーっと息を吹きかけると、そこが収縮した。 「やっ、あっ…あんっ」 「…もう、いい?…我慢…出来ない…」 そこに自身をあてがうと一気に挿入した。 まだ中は狭く、イルカの負荷を減らすために下腹を何度も撫でた。 その手を下へずらし、自身を握ってやると内壁が窄まった。 「ああっ、んっ、あんっ」 それを合図に腰を動かし始めた。 ゆっくり挿入し、素早く引き抜く。 逆に、素早く挿入し、ゆっくり引き抜く。 緩急を付けイルカを追い詰める。 「あ、あっん、…くっ、ん!」 前も同時に刺激すると、イルカがきゅうきゅう締め付けてきた。 限界が近い。 「イルカ先生…」 腰を激しく揺らす。 「ぁ、はぁっ、カ、カシ先生っ!…いっ!ああっん!」 イルカの白濁が湯船の側面に弾けた。 衝撃で強烈に締まったそこに、とどめのように自分の熱を放った。 ぐったりしているイルカの背中にキスを降らせ、自身を引き抜く。 ポツ。 ポツポツ。 火照った体に水滴が落ちた。 ポツポツポツ。 雨が降り出した。 「イルカ先生、雨が降ってきました」 のっそりとイルカが起き上がり、カカシを振り返った。 「…また…惨めな気持ちになりましたか…?」 弱々しいその声に、いつかのやり取りを思い出した。 雨で体が冷えないように、イルカを湯に引っ張る。 力の入らないイルカの体を支え、手を繋いだ。 「これからは惨めを感じる雨ではなくて、幸せを思い出す雨になりそうです」 「もう、馬鹿な事はしないで下さいよ」 「その代わり、雨の日は露天風呂でエッチした事を思い出しますからね」 イルカがみるみる赤く染まる。 「ば、馬鹿な事言わないで下さい!」 大声を出しても、腹に力が入らないから迫力に欠けている。 それすら愛しくて、鼻先にキスをした。 風呂を出て寝室を開けたら、イルカはきっと驚く。 二組の布団があまりにも近い距離で敷いてある事に。 滅多に無い環境で、興奮した自分は次のラウンドへ突入するだろう。 「そろそろ上がりましょうか」 イルカが億劫そうだったので、それならばと旅館までの移動中には出来なかった事を実行に移した。 片手は背中から脇に通し、もう片方の手は膝の下に回す。 お姫様を抱えあげるような態勢。 「やっ!こ、こんな…!大丈夫ですから!」 「たまには甘えて下さいよう」 イルカに頬擦りした。 |